anzuのブログ

\(^▽^)/

さようならCP



原一男監督と言えば奥崎謙三の「ゆきゆきて神軍」で有名な
ドキュメンタリーを撮る映画監督。
「さようならCP」は原監督のデビュー作で1972年の作品。
一度DVD化した事はあったらしいけど、ずっと再発されず
レンタル店にも並ばずオークションでは高額なプレミアが付いて
取引されていた。それが昨年に再発されたのだ!


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はい。買いましたぜよ(;^ω^)

私の映画の書庫で何度か障害者を扱った映画をのせている。
おそいひと」や「パンクシンドローム」など。
そういった映画を観る度に障害者と健常者の違いってナンだ?
って事を考えさせられる。

映画の中のワンシーンで脳性麻痺の方達が募金を募るシーンがあります。
募金した人に「どうして募金したんですか?」とマイクを向ける。
皆、口々に言う事は「可哀想だから」「気の毒だから」
母親が子供に100円を持たせて
募金をさせる。子供にもマイクを向け「どうして?」と聞くと
「分からない」「お母さんに言われたから」と・・・
「可哀想だから」と言う言葉に凄く違和感を感じる。

障害を持ってる人本人は自分の事「可哀想だ」って思ってんのか?
可哀想だけど生きてますって思って生活してんのか?

障害者=可哀想って事に凄く嫌悪感を感じるけど
実際のとこ私はどうなんだ?っていつも考えてしまう。

街中で人と擦れ違っても何かを感じる事は殆どないけれど
障害を持った方と擦れ違う時、可哀想な人だと私は思ってないのか?と。

正直ね、思ってるよ。

可哀想と思うから手を差し伸べようって気持ちになるのも確か。
映画の中で「可哀想だから」って募金する人に嫌悪感を抱くけど
結局私も同じなんだという事を思い知らされる。
自分の中でも答えが出ない。




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映画の中で性に対しての事もかなり大っぴらに話されてます。
ちょっと前に乙武洋匡さんが不倫で大問題になったけど
もちろん不倫はいけないけど、妻子ある男が不倫しただけって事でしょ?
だけど、通常の不倫ニュースよりも大げさに報道されていたのは
やっぱり、五体不満足だからでしょうね。あの障害者の乙武が!?
って不倫どうこうよりも、そっちの関心の方が大きかったように思います。

五体不満足のくせに女はべらかすなんて!って言う
上から目線の大騒ぎにしか見えなかったですね。
私は正直あのニュース、不倫って言う反則行為ではあるけれど
健常者と障害者の垣根を取っ払ったね!って感じたね。


この映画の中でも言ってるけど障害者だって普通に風俗にも行くし
女の人に興味があるのは当然で結婚もすれば子供も作る。
当たり前の事ですら回りに反対され抑圧される。
健常者に言われるのは恋愛はダメだと言われる。恋愛したら
恋愛まではいいけど結婚はダメだ。結婚したら子供を作るなと言われ
子供を作ったら2人目はやめとけと。現実を突きつけも
あれダメ、これダメ言われると・・・

新宿駅で座り込む脳性麻痺の方の横を表情変えずにスタスタと
通り過ぎる街中の人。非常に冷酷な映像に見える。
だけどスタスタ歩く街中の人の一人は自分なのだと痛感する。
そうなのだ。映画の中で冷酷非道に見える街中の人は私なのだ!
可哀想だなんだかんだ同情の言葉を並べても
どこか他人事だと思ってやしないか?
私は障害を持った方の何を分かってんだ?
そんな思いが突き刺さる。






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最後に言っていたのが、映画に出る事によって自分に何かが出来ると
思っていたと。だけど、結局は保護、保護、保護・・・
人の助けがないと何も出来ない。
これからどう生きていけばいいのか分からないと・・・

だけどこれって障害者だけの事じゃないよね。
五体満足の私達だって老後の事、年金の事、災害の事、病気の事
先の人生不安だらけ。障害を持った人は未来が可哀想だと思うのは
お門違いだわね。そこはきっと障害者も健常者も同じなんだろうね。



障害者が可哀想なのは障害を持ってるからではない。
障害者が世に出て自分らしく生きられる場所がないから可哀想なんだと。
外に出たくても偏見の目でしかみられない為に引きこもってしまうような
社会があるから可哀想なんだと・・・
そこをはき違えて体が不自由だから可哀想と思うのは差別的感情
なのかもしれない。だけど私は街で障害者と擦れ違う時
可哀想という気持ちになる。自分の中で自問自答し葛藤する・・・

映画の中で脳性麻痺の方が
「おかわいそうでけっこうじゃん!」と一言。
全て見透かされているのだ。
自分の浅はかな考えに恥ずかしくなる。


脳性麻痺の方々が非常に自立した考えを持っている事に驚かされました。
決して人に助けてもらおうなんて思っていない。
ただ、助けてもらわないといけないようなな環境、社会だから
生きずらいのだ。障害者が暮らしやすい社会を・・・なんて
どっかで聞いた事あるような人任せなセリフは軽々しく言えないけど
こういった封印されているタブーとされている障害者をテーマとした
映画をテレビでも流すべきだと思います。
24時間テレビのような上っ面な部分だけじゃなくて
本質をついた障害者の日常をね・・・
この映画、40年近くも前の映画だけど40年、障害者にとって
優しい社会になってるかと言えば何も変わってない気がします。

私に何ができるのか?
どうしたらいいのか?
って事よりも自分はどう思うか。障害者に対してどう思ってるか。
一人一人が考えるきっかけになるような映画だと思いました。

原監督は障害者に寄り添う訳でもなく、かと言って健常者側の
立場に立つ訳でも無く非常に冷酷に淡々とカメラを向け
真実を突きつける。だからこそ観る側の思考が研ぎ澄まされると感じる。
一人一人考えが違うのは当たり前で、お前はどうなんだ?
どう感じるのか?と言う事を自分自身にマイクを向けられ
問われているかのような気持ちになる。


因みに主人公の横田弘さんは2013年6月に亡くなられています。
享年80歳だったそうです。
DVDで再発されたのでレンタルにあるかもしれません。
気になった方はぜひ!