anzuのブログ

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梅雨

 
イメージ 1
 
 
シトシトシト
今年は梅雨らしい梅雨になった
見上げる空は
銀鼠の色をして
空を低く押え付ける
 
傘を差す人々が行き来する交差点
女の人は
色使いも鮮やかな傘と
洒落たデザインのスマートな長靴を合わせ
雨の日を楽しむ
 
男の人は
葬列に並び歩くように
煩わしさを言外にほのめかす
色を無くした間に合わせの
実用一点張りのビニール傘
 
街を行く人々のスタイルはまちまちだが
皆一様に
何かに急かされているようだ
 
紫陽花の花が
ふくよかな美しい顔を上げ
その場を明るくしているというのに
 
燕は
この雨の止み間を狙って
雛にせっせと餌を運んでいるというのに
 
烏は
甘えた声を上げる巣立ち雛を従え
生きる術を教えているというのに
 
この雨粒一つ一つの意味を知らぬまま
人々は朝に溢れ
昼に惑い
夜に彷徨い
一日を徒労に終える
 
この世の主役を
勝手に買って出たというのに
もはや為す術がない
 
行き詰まってしまった挙句に
遠くから軍靴の音が聞こえて来る始末
それでも浮世の春は永遠とばかりに
だんまり、知らん振り決め込み
消費と排泄と仮想敵国への悪態に
溜飲を下げる
 
 
 
 
「シロカニペ ランラン ピシュカン、
コンカニペ ランラン ピシュカン」
銀の滴降る降るまわりに、
金の滴降る降るまわりに
 
梟の神は歌う
その歌を聴く者は
そう多くはない
 
人々の直ぐ側に居た神は
森の奥へと入り
森を失くした人々は
一人一人不安を抱えて生きる羽目になった
 
森は切り拓かれ
財産とも人生とも言えない
わずかばかりの空間を
その生涯を費やす金で買取り
閉じ籠ることで安心が得られるとの嘘の情報で
 
まんまと騙され
手枷足枷をはめられた
一角の奴隷に成り下がることを
自ら選んだ
 
 
 
 
この世の生きとし生けるものの上に
等しく降る雨
背の高い木から
路傍の花まで
未だ雪を頂くアルプスの山々から
小波が小石を洗う渚まで
雨の一粒一粒が
季節に変化を促す
 
私たちにも情緒を与え
ここに一編の詩を歌わせる
 
言葉を紡ぎ
心の襞に滑り込ませ
気付かせる
 
私は私であったものが
あなたはあなたであったものが
私とあなたではなくなり
共に響き合う
 
この雨の音
シトシトシト
この雨の音
ザーザーザー
善も悪もここにはない
 
雨が降る音に
耳を傾けるだけで
私とあなたとの境界はなくなり
ただ雨は降り続く
 
チャプ、チャプ、チャプ、チャプ
ラン、ラン、ラン
 
梅雨の雨でも
銀鼠の空でも
今日も
私も
あなたも
何時も
晴れやかだ
 
 
 
 
写真:2011年 白山神社にて
詩:蒲生万寿